学校日記

突き進む人間力

公開日
2023/10/12
更新日
2023/10/12

校長メッセージ

 藤井聡太さんが昨晩の王座戦で勝利し八冠を達成したニュースはご存じのことでしょう。以前この「つぶやき」で話題にしたのが、七冠達成した後に王座戦に挑むというタイミングでした。将棋界においてはとてつもない偉業なのだと思います。
 実は、私は昨晩テレビでこのライブ中継を見ていました。相手の永瀬王座とAIグラフが行ったり来たりと拮抗している状況でしたが、一手で局面がひっくり返ったのはAIも予想外であったのではないでしょうか。しかしその後のインタビューで藤井さんが語った言葉の方が驚きでした。

 新聞記者の「八冠達成おめでとうございます!」の声かけに「厳しい局面の連続でした。自分の実力不足を痛感しました」というようなことをおっしゃったのです。一般人からすれば、「藤井さんのような人が実力不足だったら他者はいかほどか?」と感じてしまいますよね。でもこの言葉の意味がわかるライブ中継でした。
 藤井さんは圧倒的に持ち時間が不利の中(確か、終盤では毎回1分しか持ち時間はなかったと思います)、とても落ち着いていて時間終了1秒前まで考えているというふうに見えました。一方で相手の永瀬王座もこの王座戦で4連覇もしている強者ですが、とても焦っていて苦しい表情が印象的でした。
 囲碁の世界で七冠達成をしている井山王座が藤井さんのことを次のように評していました。「藤井さんは、目の前の勝敗よりも常に『自分はどこまで行けるのか』という先を見ている技術以外の人間力があるのだと思う」と。人間は常に先を見据えて前進できる存在であると著名な科学者も述べています。だからあんなに落ち着いているんでしょうかねえ。

                     学校長  川合 一紀