自立と依存
- 公開日
- 2023/12/11
- 更新日
- 2023/12/11
校長メッセージ
かなり昔のことですが、心理学者である河合隼雄さんのお話を聞く機会がありました。河合さんの元には多くの悩みを抱えた方が訪れます。ある方の悩みについてこのように語っています。
私のところに、言葉がよく話せないという幼稚園児の母親が来ました。よくよく話を聞いてみると、知的に障害があるわけでもないのに私の前でも話せないのです。そこで母親の話を聞いてみると、自立のために小さい時から一人で寝かせていたとか。最初はぐずっていたようだけれども、次第に一人で寝られるようになり、今では自分から寝室に向かうというのです。親戚やご近所からは賞賛の声をいただくのも母親としては自慢のようでした。そこで私は「もっと親がそばにいて添い寝をしてやりなさい」というと、しばらくして、その子は今までを取り戻すかのように話し始めたというのです。
多くの人が勘違いをしています。自立の反対が依存ではないのです。甘やかすと自立しないと思っているようですが、それは親自身が甘やかしている状態から抜け出せないから、すなわち親が自立していないからそうなるのです。親がしっかりと自立していて、子供の依存を許すと、子は親の姿から自ずと自立していくのです。自立とは、依存を排除することではなく、必要な依存を受け入れ、自分がどれだけ依存しているかを自覚し、感謝していることだと思うのです。
これは子どもだけの話ではなく、大人自身が自分も多くの人に依存していると自覚し感謝していないと自立しているとは言えないということですね。「依存を排除して自立を急ぐ人は孤立していきますよ」と河合隼雄さんはいいます。
考えさせられるお話でした。
学校長 川合 一紀