4月7日(木)
第11回目の入学式が行われました。
校門をくぐってクラス発表の掲示板に見入っています。
満開の桜のもと、150名の新入生が、巣鴨北中学校での生活をスタートさせました。
入学式式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ただいま、一人一人の呼名で、立派な態度を見せてくれました。150名のみなさんは、今日から本年度11月に創立10周年記念式典を予定している、11年目を迎えた豊島区立巣鴨北中学校の生徒です。教職員、上級生とともに、心からお祝いいたします。
また、ご来賓の皆様方におかれましては、公私ともにご多忙の折にもかかわらずご臨席を賜りまして、誠にありがとうございます。おかげさまで、本日の入学式を、このように盛大に挙行できますことは、このうえない喜びであります。新入生、保護者、教職員に代わりまして、高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
さて、新入生の皆さん、義務教育の仕上げとなる中学校生活の第一歩を、力強く踏み出したわけです。そして「児童」から「生徒」へと呼び名が変わりました。この呼び名の変化には、皆さんが一歩大人に近づいたことを自覚してほしいという社会からの大きな願いが込められています。
今日はアレクサンダー ロック ハートの逸話を紹介し、皆さんと一緒に『これからの心構え』について考えてみたいと思います。
サーカスの象は、ロープで杭につながれてじっとしています。杭を引っこ抜くだけの力を持っているのに、なぜその力を発揮して逃げ去らないのでしょうか?
答えは、簡単です。
『自分には、たいした力がない』と思い込んでいるからなのです。
象は子どものころ、鎖で杭につながれて毎日を過ごしています。小さいのでたいした力がなく、杭を引っこ抜くことができません。象は、大きくなってからも、その思い込みにとらわれ続けます。調教師はそれを知っているから、鎖のかわりにロープを使って象を杭につなぎとめるのです。大きな象にとって、杭を引っこ抜くぐらい、たやすいはずです。しかし、象は『自分にはたいした力がない』と思い込んでいるから、何もせずにじっとしているのです。
これは人間にもあてはまります。『自分にはたいした力がない』と思い込み、自分で限界を設定して生活していると、本来の力を存分に発揮できずに過ごしてしまいます。
皆さんには、非凡な能力があります。それを発見して伸ばすことが大切です。『自分にはたいした力がない』という思い込みから自分を解き放ちましょう。
象が、巨木を引っこ抜く力を持っているのと同じ様に、皆さんも非凡な能力を持っています。そのことに気づけば、自分を信じることができます。それは、山をも動かす強い力となるのです。
本校の先生方は、皆さん一人一人のよいところを見つけ、その力を引き出し、さらに伸ばす手助けをしてくださるでしょう。
先の東日本大震災では、未だかつて経験のない甚大な被害に遭いました。お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方にお見舞い申し上げ、一日も早い復興を願っております。
災害が起きてからの様子は、テレビや新聞でその一端をうかがい知ることができます。国内のみならず、海外からも多くの支援をいただいています。その中でこんなエピソードがありました。
米国救援隊の一員として東北地方に派遣された隊員が、救援活動中、災難の最中でも礼儀正しい被災者の方に感銘を受けたというものです。
日系4世の消防士ウエハラさんは、地震翌日の3月12日、ロスアンゼルス郡消防局の同僚73人と共に青森県の米軍三沢基地に到着後、1週間にわたって岩手県大船渡、釜石両市で活動しました。被害の甚大さを目の当たりにし、両親ゆかりの広島に行った経験から「原爆投下後の広島を連想した」というほど驚きました。
そんな中で「倒壊したカラオケ店のそばにいた女性オーナーが『何もありませんが』といって煎餅を差し出してくれた」ことに最も強い印象を受けたといいます。
他にも、災害時にもかかわらず規律正しい日本人の姿や、助け合う精神が、各国メディアを通じて全世界に報じられています。自分で被害に遭いながらも役割を探し、ボランティア活動をしている中学生もいました。
今、皆さんは「学校に通い勉強ができる」といった、普通だと思われていることが、普通にできる幸せを肌で感じ、中学校生活を過ごさなければならないと思います。そして、復興に向けて歩みを進めている一員という自覚をもって、一人ひとりができることをきちんと行う。ということを再確認する日にしたいと思います。
さて、新入生保護者の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。私ども、教職員一同、お子様をお預かりした大きな責任を果たすべく、最大の努力をいたす決意でおります。この3年間は、義務教育の仕上げの大切な時期です。学校、家庭、地域が、ともに連携を密にし、子ども達がどうすれば幸せに生きることができるのかを追求し、大人の背中を見せて、子どもたちを立派な人間に育てていきたいと考えています。ご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
結びになりましたが、新入生の皆さんの今日の決意を表すような、高浜 虚子の俳句を一句贈り、式辞といたします。
「春風や 闘志いだきて 丘に立つ」
平成23年4月7日
豊島区立巣鴨北中学校 校長 江川 登