本当の人権教育
- 公開日
- 2023/09/11
- 更新日
- 2023/09/11
校長メッセージ
猫のゾルバは言った「きみはぼくたちとは違っていて、だからこそぼくたちはきみを愛している」。
これはルイス・セプルベダさんの著書「カモメに飛ぶことを教えた猫」の中に出てくる主人公ゾルバの言葉です。お読みになったことがありますか。あらすじはこんな感じ。
ドイツにあるエルベ川沿いの港町ハンブルクで、のんきに暮らす猫のゾルバ。彼が運命のいたずらにより、瀕死のカモメから1個の卵を預かる。死にゆく母鳥カモメとの約束。それは、その卵を食べないこと、ヒナが生まれるまで卵の面倒をみること、そして生まれたヒナに飛び方を教えることの三つ。彼は、仲間たちの協力を仰いで卵を温め、生まれたヒナをフォルトゥナータ(幸運な者)と名付け、餌の確保に奮闘し、チンピラ猫を追い払い、ネズミのボスと休戦交渉をする。
そんな苦労の甲斐あって、フォルトゥナータはすくすく育ち、いよいよ巣立ちの日も間近と迫る。そんなあるとき、フォルトゥナータは言う「でもわたしは、飛びたくなんかないの。カモメにだってなりたくない。わたしは猫がいいの」と。なんと猫に育てられたカモメのフォルトゥナータは、自分も猫になれると思い込んでいたのだった。そこでゾルバは「これまできみが、自分を猫だと言うのを黙って聞いていたのは、きみがぼくたちのようになりたいと思ってくれることが嬉しかったからだ。でも本当は、きみは猫じゃない。きみはぼくたちとは違っていて、だからこそぼくたちはきみを愛している」と打ち明ける。そしてこう締めくくるのだった。
「きみのおかげでぼくたちは、自分とは違っている者を認め、尊重し、愛することを知ったんだ。自分と似た者を認めたり愛したりすることは簡単だけれど、違っている者の場合は、とてもむずかしい。でもきみといっしょに過ごすうちに、ぼくたちにはそれができるようになったんだ」
いかがですか。読んでみたくなりましたか。国籍や人種・宗教の違いで差別する世の中を、我々日本人はあまり切実には感じていないかもしれません。しかしどうでしょう、学歴や職種、病気や考え方の違いから起こるいじめや排除は正に差別そのものであり、日本人の私たちにだって身近にある問題です。でもゾルバは、猫とカモメという間柄にありながら、最初はやむなく交わした母鳥カモメとの約束であったかもしれないけれど、ヒナの成長を見守り、次第に心を通わせ、相手を尊重し愛することでその垣根をなくしていくのです。だから冒頭の言葉が言えるのですね。ゾルバに教えられますよ・・・本当に。
え〜っと確か・・・劇団四季のミュージカルでもやっていた記憶がありますね。
学校長 川合 一紀