言葉の影響力
- 公開日
- 2020/06/22
- 更新日
- 2020/06/22
校長メッセージ
これは鈴木康之さんの著書で目にしたものです。
ある有名な詩人が街を歩いていると、街角に托鉢の方が立っているのに出くわしました。彼の首には「私は目が見えません」という札が下げられています。足下にはお椀が置かれていましたが、通行人はほとんど素通りです。たまにチャリンと小銭を投げ入れるくらいです。そこでその著名な詩人が「私が、ちょっとその札の言葉を書き変えていいですか」と聞きました。その托鉢の方は「ええ、どうぞ」とあまり気にしていない様子。しかし新しい言葉に書き換えたところ、見る間に人だかりができて、お椀にはお金があふれかえったというのです。それだけでなく、今までただ通り過ぎていた人たちが彼に優しい言葉をかけていくのです。さて、この詩人が書き換えた言葉とはどんなものだったのでしょうか。
それはこうです。「もうすぐ春が来ます。でも、私はそれを見ることができません。」
いかがでしょうか。「この托鉢の方は、私たちが普通に許されている、当たり前の幸福と希望が永遠に味わえないのだなぁ」と心をかき乱されるのですよね。この言葉に出会わなかったら、目が見えることの有り難さや春の訪れを喜ぶ、当たり前に思っている幸福を実感することはなかったのでしょう。時に言葉には、人生の真実を思い出させてくれる力があるのですね。
新型コロナウイルスの影響で、当たり前の日常がこんなにも有り難かったのかという実感をされた方も多いことでしょう。だからちょっと見方を変えて、こんなことがなかったら「当たり前の有り難さ」に気づくこともなかったとプラスに捉えたいものです。そしてそれを言葉に表すことが大切なのだとも思うのです。人それぞれ、その時に置かれた状況によって受け止め方は違います。それでも言葉によって心は動かされるのです。
言葉ってすごい力を持っているんですよね。
学校長 川合 一紀