桐生悠々
「言わねばならないことをいうのは、愉快ではなく、苦痛である」
これは、ジャーナリスト桐生悠々(きりゅう ゆうゆう)の言葉です。桐生悠々は信濃毎日新聞社の記者でした。 1933年、日本陸軍が関東一帯で「防空大演習」をやりました。この時代は、まもなく戦争が始まるという気配濃厚な時だったのです。だからこれは、もし関東地方に敵機がやってきて爆撃機が爆弾を落とした時に、どうやって火を消し止めたらいいかという演習だったわけです。しかし桐生悠々は信濃毎日新聞の紙面で「関東防空大演習を嗤う(わらう)」という記事を書きます。「敵機を関東上空に迎え撃つということは、我軍の敗北そのものである」と断言したのです。関東で防空大演習をするってことは、敵機が関東上空にやってくることを前提にしている。爆弾を落とされた時点で大きな被害が出るのに、火を消し止める程度の訓練とは何事か。爆撃を受けるということはすでに日本軍は負けていることではないのか。そもそも、爆撃を受けないように守ることが必要で、本末転倒である。とまぁ、こんな内容の記事だそうです。 至極、まっとうな意見ですよね。でもこの時代の新聞・ラジオをはじめとするメディアは、軍の批判をするようなことは御法度だったのです。桐生悠々は在郷軍人会から批判を受け信濃毎日新聞社を辞めます。 しかし信濃毎日新聞社には桐生悠々の机が残っているそうです。「何物も恐れずに正しいことをきちんと言う。たった一人でも戦った先輩記者の姿勢を学びたい」という社風だそうです。 そんな桐生悠々でも、言わねばならない正しいことでも、言ったことで巻き起こる事態を想像すると、辛かったと心を痛めていたことがよくわかります。 いかがでしょう、同じような心境の方々もいらっしゃるのではないですか? 学校長 川合 一紀 突き進む人間力
藤井聡太さんが昨晩の王座戦で勝利し八冠を達成したニュースはご存じのことでしょう。以前この「つぶやき」で話題にしたのが、七冠達成した後に王座戦に挑むというタイミングでした。将棋界においてはとてつもない偉業なのだと思います。
実は、私は昨晩テレビでこのライブ中継を見ていました。相手の永瀬王座とAIグラフが行ったり来たりと拮抗している状況でしたが、一手で局面がひっくり返ったのはAIも予想外であったのではないでしょうか。しかしその後のインタビューで藤井さんが語った言葉の方が驚きでした。 新聞記者の「八冠達成おめでとうございます!」の声かけに「厳しい局面の連続でした。自分の実力不足を痛感しました」というようなことをおっしゃったのです。一般人からすれば、「藤井さんのような人が実力不足だったら他者はいかほどか?」と感じてしまいますよね。でもこの言葉の意味がわかるライブ中継でした。 藤井さんは圧倒的に持ち時間が不利の中(確か、終盤では毎回1分しか持ち時間はなかったと思います)、とても落ち着いていて時間終了1秒前まで考えているというふうに見えました。一方で相手の永瀬王座もこの王座戦で4連覇もしている強者ですが、とても焦っていて苦しい表情が印象的でした。 囲碁の世界で七冠達成をしている井山王座が藤井さんのことを次のように評していました。「藤井さんは、目の前の勝敗よりも常に『自分はどこまで行けるのか』という先を見ている技術以外の人間力があるのだと思う」と。人間は常に先を見据えて前進できる存在であると著名な科学者も述べています。だからあんなに落ち着いているんでしょうかねえ。 学校長 川合 一紀 そうぞう
「そうぞう」というとどのような字を思い浮かべますか。おそらくこの2つ「想像」と「創造」。他にもありますが、まずパッと浮かぶこの漢字はそれぞれ意味が違いますよね。
「想像」とは、頭の中で思い描くこと、そして「創造」は何か新しいものを作り出すことと辞書には載っています。でもこの「創造」とは、今まで誰も思いつかなかった見方や考え方を示すものだと言ったのは物理学者の湯川秀樹氏。 なるほど、単純に新しいものを作り出すというよりも、独自の発想から今までに無いものを生み出すことと捉えるようです。例えばiPhone15が発売になって「新しいものが出た!」というのはiPhone14がiPhone15になっただけで創造されたとは言わない。スティーブ・ジョブズが2007年に電話とインターネットの融合として初めて世に出した「初代iPhone」こそが創造だったわけです。 もちろんこの段階に至る前には、実は頭の中で「あゝでもない、こうでもない」と想像していたはず。つまり想像も全く無の状態から生み出せるものではなく、経験や体験があってこそ想像できるのですね。赤ちゃんに「想像してごらん!」といってもそれは難しいことかもしれません。 想像と創造は無関係ではないようです。 ところで受験生の皆さん、入試問題に「想像して、創造してみよう」なんて問題が出たら・・・「そう、ぞっとしませんか」 ん? 学校長 川合 一紀 心温まる話
今日の全校朝会で、困っていた小学生を助け家まで送り届けたという3年生の心温まる行動についてお話をしました。実はそこでは紹介しませんでしたが、2年生の都内巡りにおいても心温まる行いがあったのです。
レストハウスでの昼食で、ある生徒が「とてもおいしかったです」といった内容のちょっとしたお手紙を残していったそうです。それを見たレストランの方々がいたく感動され素晴らしい生徒だとお褒めの言葉をいただいたのだとか。 優しい心や親切心からの行動は、誰が聞いても心が温かくなります。そしてこのような行動は伝播していくのですね。巣鴨北中生の日頃の行動が、いつもいつも相手を思いやり、加えて自分も良い思いになっていくという相乗効果があるようです。先生達も嬉しくなりました。 こういう人は必ず幸せになります。そしてその幸せをみんなにも分け与えていく存在なのです。巣鴨北中学校の生徒はそんな人であると自信をもって言えるのですね。 あなた達の行動に感謝します。ありがとう!! 学校長 川合 一紀 |
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