ご卒業 おめでとうございます!
卒業生の皆さん、今日は最後の授業として私から「情けは人の為ならず、志をもって生きる」ということについてお話をします。
「情けは人の為ならず」とは、情けは他人のためにならないからやめておいた方がいいという意味ではありません。辞書を引けば、巡り巡って自分に戻ってくるという意味で示されていますが、もう少し深く考えてみましょう。 「情け」という字は「りっしんべんに青」と書きます。りっしんべんは、心を意味する字です。つまり海のごとく空のごとく青く澄んだ心で相手に情けをかけたとき、それは自分の心の在り様を見つめなおすという深い意味があるのです。「情け」という漢字を使った言葉には、友情とか愛情という字があります。これは相手に対してではなく、友に対する自分の心の持ち様や、愛する人への自分の心の在り様をしっかり見つめるとき、その変容は自分自身に巡って返ってくるという意味なのです。 「志」とは、誰かのために何かを成し遂げようとする決意のことです。ここにはお金を儲けようとか有名になろうという打算はありません。こういう心は野心と言います。野心を抱く人は、とかく裏切られたり信頼されなくなったりしますが、志を抱く人は、例外なく応援されるのです。人が人として生きていくとき、命を大切にし、誰かのために何かを成し遂げようとする志が未来を明るくします。このことを一言で言えば「使命」と言います。「使命」とは命を使うと書きます。無駄な命は一つもありません。その大切な命を使って、志を抱き、情けをもって自分を見つめて歩んでいってください。 大半の皆さんが生まれた年は平成19年ですね。この年の世相を表す漢字には「偽」という字が選ばれています。ちょっと見るとイメージの悪い字ですが、「偽」とは、人が真似て物を作るという意味から作られた漢字であり、そこから偽物のイメージがついてしまったのかもしれません。しかし、親御さんは、あなたたちが元気に育つようにと志をもって育て、あなたたちのために身を粉にして無償の愛(情け)を注いでくれました。このことは決して偽物ではありません。あなた達の成長につながる貴重な財産なのです。 「人生において成功は約束されていない。しかし成長は約束されている」うまくいかないことがあっても、人は必ず成長します。どうか志を抱き、相手に情けがもてる、澄んだ青い心の持ち主であってください。卒業おめでとうございます。 (式辞一部抜粋) 学校長 川合 一紀 |
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