みなさんは、“頭ごなしに怒られた”というような経験はありますか。失敗をしたとき、親や先輩、上司は訳も聞かずに叱責することがありますね。でも誰もが一度は「結局は失敗したが、あのときはああするしかなかった」と考えたことがあるでしょう。人は皆「私がそうしたのには、それなりの訳がある」と腹の底では思っているのです。ただそれを口にはしません。たいていは「ごめんなさい」と口では謝っても、心の中では必至でその理由を叫び続けていますよね。結果を攻めるのはたやすいことです。なぜなら結果は弁解しようがないからです。でも他人には「結果」しか見えないのです。ぜひ考えていただきたいことは、お子さんが失敗したとき、良くも悪くもその結果を生んだ本人の判断の正しさと、それを行動に移した勇気を認めていただきたいのです。まだ人生経験未熟な者からすれば、正しい判断と思ったことも実は正解ではないことなどたくさんあります。我々大人だってあるでしょう。この失敗だけを捉えて叱責すると、仮に相手が反省や謝罪に応じたとしても、それは「謝りさえすれば、とりあえずその場の非難からは逃れられる」と思っているにすぎないのです。
できることなら、理由をじっくり聞いて、全体を十分に理解してから、より良いアドバイスをしてあげたいものです。相手の力を伸ばすとは、そういうことではないでしょうか。
学校長 川合 一紀