例えば、従来の包丁などは使わずに置いておくと錆びてしまいますよね。ステンレス製やセラミック製のものもありますが、使わないと切れ味が落ちるのも確かです。有名な職人さんによって作られた鋼の包丁は、定期的に研いでもらうと良いようですが、何年も繰り返していると切れ味は維持できるものの、一回りくらい小さくなっていくのだそうです。つまり研いでいくうちに擦り減っていくわけですね。そういったものは、お鍋やステンレス皿、箒やチリトリ、電球や電子機器など他にもたくさん身の回りにあります。使わず大切にとっておいて使い物にならなくなっても、使って擦り減って使い物にならなくなっても結果的には同じように映りますが、それまでの過程を考えれば、有効に活用した方が良いのは言うまでもありません。まして人の才能やセンスというものは、使って初めて意味をなすものでしょう。そして宝の持ち腐れというように才能やセンスといったものも、使わないと鈍ってきてもったいないことになります。さらには、この才能やセンスは、擦り減るどころか使えば使うほど磨かれていくのですから使わないわけにはいきません。お子様の才能やセンスは無限大です。でもどこに隠れているのか見つけにくいこともあります。本人の気づかない場合もありますから、保護者の皆様も才能やセンスの一端を見つける手助けをしてあげてください。
学校長 川合 一紀